2021年はM&A件数が、これまで類を見ないほど増加した年でした。中小企業庁の調べでは、2025年問題では後継者が不在のまま、日本の中小企業の約半数近い数が廃業の危機に直面しているため、中小企業救済の一環としてM&Aを希望する経営者が増加しています。
M&Aの案件の探し方に何かコツはあるのでしょうか?
この記事ではM&A案件の見つけ方の5つの方法と成功をさせる方法について解説します。
M&A仲介会社に就職したい人は担当した買い手企業担当者にアドバイス出来るようにチェックしてください。
2025年問題とはどういうこと?
現在、日本の企業全体の約3分の1にあたるのが中小企業です。この中小企業の経営者が70歳以上になるのが2025年で、約245万社にまでおよびます。
そのうちの約127万社が後継者が見つからないため廃業に追い込まれる危機にさらされています。
この127万社が廃業してしまうと約650万人もの従業員が失業してしまい、約22兆円ものGDPが消失するために非常に深刻な経済的打撃が日本経済に与えられます。
これを2025年問題とよんでいます。
出典: 中小企業庁 「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」
このような時代背景の中、中小企業の承継を希望する経営者が多く、M&Aが増加しています。
M&A案件はどのように探すのがいいのか?
事業承継や拡大、成長のためにM&Aを検討している経営者の中にも、どのように案件を探したらいいのか、探し方が分からないという方も多いのではないでしょうか?
M&Aを希望しても、自社にふさわしい案件が見つからなければ、その先へは進みません。
中小企業の経営者がM&Aの案件を探す方法は5通りあります。
- 金融機関や投資ファンドに紹介を依頼する
- 知り合いや取引先に依頼して探す
- M&A仲介サイトで探す
- M&A仲介会社などに依頼して探してもらう
- 後継者人材バンクに登録する
金融機関や投資ファンドに紹介を依頼する
銀行などの金融機関や投資ファンドは、顧客としてさまざまな企業との取り引きがあり、その企業の資金的なことを把握しています。
M&Aの紹介を依頼すると、顧客の中からリストアップしてくれることもあります。
銀行が取り扱うパターンで最も多いのが、債務超過の会社の整理のためにM&Aを提案し、案件を持ってくるものです。
このようなパターンは、赤字経営で債務を引き継ぐリスクがあります。金融機関が提案するM&Aは、銀行にとっての利益を回収することが目的です。
予想外の債務でむしろ事業の利益が減少することがないように注意が必要です。提案されたM&Aが利益のあるものか、どうかをしっかりと調査することが大切です。
知り合いや取引先に依頼して探す
知り合いや取引先は、相手先の企業がどのような会社なのかを把握していることから、M&Aの実現へと進む可能性は高い方法だといえます。相談に来社した経営者の中には、知り合いや取引先に依頼している方もいるかもしれません。
しかし、一方では知人だからといって100%信用してしまうと、後になってM&Aをする時には知らなかった債務があるなど、リスクも伴うことがあります。
長年、築いてきた信頼関係に亀裂が入ってしまうことにもなりかねません。
会社の精査には専門家の知識が必要です。企業のM&Aは長い目で見て安全を重視することが重要だという認識を持ってもらいましょう。
M&A仲介サイトで探す
M&A仲介サイトは手軽に利用できるうえ、コストを抑えたM&Aができるので人気が高まりつつあるM&A案件の見つけ方です。
登録料は無料で、自分で希望に見合った企業を見つけることができます。理想的な案件が確実に探せるわけではありませんが、資金的な心配は軽減されます。
最近ではAIを活用したM&A仲介サイトもあり、登録しておけば希望とマッチングした案件を自動的に紹介してくれるものもあります。
M&A仲介会社などに依頼して探してもらう
最もポピュラーで成功率が高い方法です。M&A仲介会社は、独自のネットワークをもっているため、その中から希望条件にマッチングした企業を紹介してもらえます。
社内には、弁護士、税理士、公認会計士などの専門家がいるため、案件ごとに企業のデューデリジェンスという債務、訴訟などのリスクを精査し、M&Aの方針を決定します。
さらに、成約になるとM&Aに必要な書類の作成や手続きなどを行ってくれます。
M&Aに関する知識とノウハウを豊富にもつM&Aコンサルタントが、M&Aに関して心配なことや、重要なポイントなどを適切にサポートしてくれます。
そのため、M&A仲介会社に依頼するのが、成功率が高いM&Aを実現しやすくなります。
ただし、中には悪質な仲介会社もあるので、注意が必要です。予想以上に予算がかかったのにもかかわらず、シナジー効果が得られなかった、希望にマッチしたM&Aではなかった、と契約を締結してから後悔しないように着手金、中間報酬、月間手数料の有無などの料金体系や、サービス、支払いのタイミングなど詳細も確認することが重要です。
後継者人材バンクに登録する
2011年から設置された事業引継ぎ支援センターのサービスの一環として後継者人材バンクがあります。この人材バンクには事業承継の候補者として起業を志している人も登録しているため、後継者と探している経営者と条件が合えば、引き合わせが可能です。
双方の合意が得られればM&Aが成約となります。手続きに必要な専門家を依頼する際には費用が発生しますが、事業引継ぎセンターからサポートが受けられ、コストを抑えることができます
M&A案件を見極めるための注意点
実際にM&A案件を探すときに、リスクがない案件かどうかを見極める方法が3つあります。これらをM&Aの買い手企業の担当者にレクチャ―することが大切です。
- 事業の将来性
- 法務・税務リスク
- 人間性が信頼できる経営者か
事業の将来性
世の中は絶えず変化をしているため、事業の将来性はとても重要です。目先の利益を追及だけすると、数年先にはニーズがなくなる可能性もあります。
M&Aのときに黒字経営の企業であっても、その利益が長く続くかどうかまで検討する必要があります。
レッドオーシャンの事業は、業界での生き残りも熾烈であるために、M&A後の利益継続は容易ではありません。M&Aを行う前に、競合調査や市場調査が必要です。
法務・税務リスク
M&Aには、表には出ていない企業のリスクがある場合もあります。一見、条件や会社の文化にマッチした企業だと思ってM&Aをしたら、税務や法務の多額な債務があることが発覚するケースもあり得ます。
このような企業のリスクをデューデリジェンスといい、弁護士や公認会計士などがM&Aの事前に行い、方針を決定してくれるため、費用がかかっても必要経費を考えて専門家に依頼することで後のリスクを回避することができます。
人間性が信頼できる経営者か
企業間の取り引きにかかわらず、経営者が信頼できる人間性かどうかは、何においても重要なポイントです。
法務、税務リスクとも関係することですが、M&Aの契約を締結後にリスクが明るみに出たなどのリスク回避のためにも、取り引き先の経営者と誠実な取り引きができる人間性かどうかを見極めることはビジネスにおいても非常に重要です。
M&Aを成功させる6つの方法
実際にM&Aの取り引き企業が見つかったら、具体的にM&Aを成功させる7つの方法があります。
- 事業計画を立てる
- 事業内容や法律・税金の知識を学ぶ
- 弁護士や公認会計士、司法書士、税理士など.専門家に依頼する
- .経営者になるための研修期間を体験する
- PMI(Post Merger Integration)
- 顧客、取引先や従業員への配慮をする
事業計画を立てる
事業には、現実的な事業計画が必要です。企業の現状を把握し、売上、経費、利益について実現可能な事業計画書を作成します。
事業は、順調に進むばかりではなく、従業員のケガや病気、機械や設備の修理など、予想ができないトラブルが起きることもあります。
このようなアクシデントにどのように対処するのかも考慮して対策を立てることが必要です。そのうえで事業を起動に乗せるための対策もしっかりと立てることも重要です。
事業内容や法律・税金の知識を学ぶ
M&Aをして多角化や事業拡大が戦略目的なら、事業内容や、M&Aをした後の法律、税金の知識を学ぶ必要があります。
さらに、事業を取り巻く業界の状況やトレンドなどの知識を身につけることも役立つでしょう。
その道の専門家に依頼する
M&Aには、自力ではできない書類作成や手続き、相手企業のデューデリジェンスなどのプロセスがあります。これらは、専門家に依頼した方が安全でスムーズなM&Aが実現できます。
PMI(Post Merger Integration)検証
M&Aを行った後の統合プロセスをPMIといいます。M&Aは異なる企業が合併や統合して、1社になることです。PMIは、M&Aを行ってからのシナジー効果を速やかに高めるためにも重要です。PMIの検証を適切に行い、リスク対策をすることがM&A成功のためには欠かせません。
顧客、取引先や従業員への配慮をする
事業において顧客は重要ですが、それと同じくらい取引先や従業員も重要です。特に合併や統合のM&Aであれば、これまでとの仕事環境や文化とはまったく違う環境で働くことになります。
M&A後にスムーズ、かつ従業員に意欲的に働いてもらうために、環境を整える必要があります。取引先や従業員との信頼関係を築くための努力も重要です。
まとめ
M&Aの案件の探し方は、金融機関や知人の紹介などさまざまです。しかし、企業の表に出てこない債務や訴訟などのリスクがあるために、M&A仲介会社に依頼するとスムーズだということをM&A相談に来社した経営者に知らせることでM&Aを成功へと導きましょう。
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