2025年問題を目前に、国の政策として中小企業の事業承継や引継ぎに補助金を給付していることをご存じでしょうか?
この記事では、中小企業が事業承継や引継ぎの目的で給付している補助金について解説します。
M&Aを検討している中小企業の経営者だけでなく、M&A業界に就職を希望している人も知識としてぜひ、チェックしてみてください。
2025年問題とは?
2025年までに解決が急務とされている日本の問題に、中小企業の事業承継と引継ぎ問題があります。
中小企業庁の調査報告によると、2025年までに中小企業、および小規模事業の経営者が一般的な引退年齢の満70歳を迎える人数は245万人、このうち約50%近い127万人が後継者が不在の状況です。
この127万人は、日本国内の大小併せた企業全体の約3分の1の人数になります。
このままでいくと2025年までに廃業する中小企業や小規模事業は相次ぎ、累計で約650万人の労働者が失業、約22兆円のGDPが失われると警告しています。
出典: 中小企業庁 「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/hikitugigl/2019/191107hikitugigl03_1.pdf
新型コロナパンデミックの前年2019年に廃業、解散した企業は4万3,348件(前年比7.2%減)、休廃業企業の経営者の約4割が70代で、60代以上でみると経営者の年齢構成の8割(構成比83.5%)を超えています。
これは2018年(83.7%)より0.2ポイント低下していますが、一方では企業の経営者の高齢化が休廃業・解散の加速要因にであると示されています。
出典: 東京商工リサーチ 「2019年「休廃業・解散企業」動向調査」
2020年の新型コロナパンデミックにより、外出規制が必須となったため、同年1-12月に全国で休廃業・解散した企業は、4万9,698件(前年比14.6%増)で、過去最多の2018年(4万6,724件)を抜き、2000年に東京商工リサーチが調査を開始以降、最多を記録したと報告されています。
このような企業が休廃業をした背景としては、企業の41.7%が、経営者の年齢は70代でした。経営者の年齢構成全体の60歳以上でみると84.2%と8割を超え、60歳以上の比率、2019年から0.7ポイント上昇しています。
最も大きな理由としては、事業承継がスムーズに進まず、社長の高齢化が休廃業・解散したことが加速の要因であると示唆されています。
出典: 東京商工リサーチ 2020年「休廃業・解散企業」動向調査
このような背景から、昨年2021年はM&A件数が過去最多の4,280件で、2020年に比べて14.7%増加しています。
一方で、2021年(1-12月)の企業の休廃業・解散は、全国で4万4,377件(前年比10.7%減)となり、過去最多だった2020年(4万9,698件)から、1割以上減少しています。
2021年の休廃業は、2000年以降、2020年、2018年(4万6,724件)に次いで3番目の高水準となり、倒産企業の7倍以上が休廃業をしています。
出典: 日本M&Aセンター「2021年のM&A件数は過去最多、2022年トレンド予測」
出典:東京商工リサーチ 「休廃業・解散企業は前年から1割減の4.4万件、廃業前決算「黒字」が大幅減【2021年】」
このように、日本の企業全体の3分の1を占める中小企業の経営者が2025年までに70代になることは、同時に大多数の中小企業が後継者が不在のために廃業に追い込まれる危機に直面していると中小企業庁は警鐘を鳴らしています。
これは、日本経済に大打撃を与える悲劇となるため、国としても深刻な中小企業の救済と日本経済を保護のために中小企業の事業承継と引継ぎのために補助金の給付を決定しました。
事業承継の補助金とはどのようなもの?
事業承継の補助金は、後継者が見つからない、もしくは不在で経営者が高齢の中小企業に事業承継を推進する政策として給付するものです。
この事業承継には、次のような経営改革の取り組みとして必要経費の一部を補助を目的としたものです。
- 経営者の交代
- 事業再編
- 事業統合を契機
出典:中小企業庁 「令和元年度補正予算事業承継補助金の公募を開始します」
事業承継の補助金は、いくら支払われる?
2022年度の補正予算によると
○補助上限額と補助率
(補助上限額) 150万円~ 600万円
(補助率) 1/2 ~ 2/3
事業承継の目的は次のようになっています。
*事業承継・引継ぎに係る取組を、年間を通じて機動的かつ柔軟に支援します。
*補助対象:
- 事業承継・引継ぎ後の新たな取組に関する設備投資等
- 事業引継ぎ時の専門家活用費用等
- 事業承継・引継ぎに関する廃業費用等
引用:中小企業庁 「令和4年(2022年実施)事業承継・引継ぎ補助金の概要」
中小企業の定義とは?
中小企業庁が定義している「中小企業」とは法人税法における定義に基づいています。この定義によると「資本金1億円以下の法人」のことを示します。
しかし、法律や制度によって「中小企業」の定義は異なることもあります。
業種区分
法人税法における定義 中小企業基本法の定義
製造業その他
資本金1億円以下 資本金3億円以下又は従業員数300人以下
卸売業
資本金1億円以下又は従業員数100人以下
小売業
資本金5,000万円以下又は従業員数50人以下
サービス業
資本金5,000万円以下又は従業員数100人以下
中小企業は大企業と比べて、様々な税負担の軽減措置があります。
例えば、「法人税率」の軽減税率です。資本金が1億円以下の中小企業には、大企業の法人税より低い税率が適用されます。
事業承継補助金の申請方法は?
申請受付は、電子申請システムのみで取り扱います。補助金は、年間で複数回の公募を行いますが、受付期間が約1か月程度と短期間なので、常に公募期間をチェックする必要があります。
申請書を作成のためにはアカウントが必要
事業承継補助金の申請にはjgrantsという電子申請にて行います。そのために「gBizIDプライムアカウント」の作成が必要で、取得に2~3週間かかります。事前に申請書作成に必要な書類を取得する必要があります。
アカウント登録に必要な書類
法務局発行の印鑑証明、または地方公共団体発行の印鑑登録証明書の原本(発行日より3ヶ月以内のものに限る)
- 法人代表者印または個人事業主の実印を押印した申請書
- 法人代表者自身、または個人事業主自身のメールアドレス
- 法人代表者自身、または個人事業主自身のSNS受信が可能な電話番号
アカウント作成
必要書類が取得できたら、「gBIzID」のWebサイトの「gBIZプライム作成」から申請書を選びダウンロードします。
必要事項を入力し、申請書と一緒に印鑑証明書を「GビズID運用センター」に郵送します。
申請書が受理されるとメールでお知らせが届きます。
「URL」をクリックしてパスワードを設定をすれば補助金申請のアカウント作成手続き完了です。
申請書の作成
アカウントが作成できたら、電子申請システム「Jgrants」で補助金の申請できます。
補助金申請には、次の書類が必要です。
法人の場合
- 「履歴事項全部証明書」
- 「直近の確定申告書」
- 「直近の決算書(賃貸対照表・損益計算書)」
「経営者交代型」の場合
- 「補足説明資料」
- 「住民票」
- 「認定経営革新等支援機関による確認書事務局が指定した様式で、認定経営革新等支援機関の印鑑があるもの」
- 「申請資格を有していることを証明する継承者の書類」
- 「承継に関する書類」
- 「その他(加点事由に該当する場合)」
これら一式が申請の添付書類となります。
これらの必要書類が1点でも欠けると審査が通りませんので、厳重に注意が必要です。補足説明は、審査通過のために重要になることもありますので、出来るだけ多くの資料を添付して申請することが大切です。
出典:中小企業庁 「事業承継・引継ぎ補助金」中小企業庁 「公募要領等ダウンロード」
まとめ
中小企業の事業承継、引継ぎ補助金は、年間で複数回実施しています。廃業するより事業承継をするための補助金を活用して、大切な事業の後継者を見つけてください。
コメント