2021年、過去最大のM&A件数を記録し、2022年は昨年をさらに上回る気配を感じさせます。
2020年にはテレビやニュースで「取得価格は非公表」などの記事を見かける機会が増えました。M&A業界に就職を希望している方には、M&Aに関わる新しい言葉を耳にするたびチェックしているのではないでしょうか?
この記事では、M&A業界に就職を希望している方が、ニュースで話題になったM&A業界用語や「これだけは知っておくべき基礎知識」を解説します。
M&A業界の就職準備中の方も、気になっている方も、ぜひ参考にしてください。
ニュースで話題になった「取得価格は非公表」とは?
M&A(エムアンドエー)は、英語の「Mergers and Acquisitions」、日本語の意味は「合併」と「買収」ですが、買い手企業が企業や事業を買収するための適正な価格を決めます。
これを買収価格とよんでいます。
M&Aを行う際、仲介会社や銀行、証券会社、ファンド会社などは、この買収価格を決定し、売り手企業と買い手企業に提案します。
取得価格には、相場とよばれる一般的に何かが売買の取り引きをされるときに使用される金額を示します。
相場とは、一般的に物が取引される際の金額のことで買収する企業や事業の時価の値打ちを意味します。
売却価格とは何を示す?
M&Aを行う企業の売却価格は、買収しようとしている企業や事業の現時点における価値を示し、売却金額のことを表します。
M&A価格はどのように決定される?
M&Aの買収価格を決定するには、売却価格を決める要素を理解する必要があります。その企業価値や事業価値を基に決められる売却価格、買収価格は、最終的には買い手と売り手の両企業の間で交渉により価格が決定します。
つまり、その企業が保有する資産、株価などを総合的に評価して企業価値、事業価値が決定するため相場が明確にはありません。
M&A仲介会社のコンサルタントやアドバイザーなら、M&Aに対する相場の知識を知っておくことは非常に重要です。
M&Aを行う双方の経営者は価格が重要であり、最大の関心ともいえるためです。買い手企業は、出来るだけ安く買いたいと考え、売り手企業はできるだけ高く売りたいと考えます。
この両企業の希望価格のギャップを仲介するのがM&A仲介会社のコンサルタントの腕の見せどころ。
双方の企業の希望価格に折り合いがつかなければM&Aは契約に進みません。
そのため交渉でM&Aを成約できる金額がM&A相場価格となります。
つまり、双方の企業にとって有効なM&Aを成約できる金額(相場価格)に対する知識が優れたM&Aコンサルタントのスキルにもつながることでしょう。
相場価格を決定するのは、容易なことではありません。そのためにM&A仲介会社のコンサルタントは専門的な知識やスキル、高い営業力と交渉力が求められるのです。
M&A相場価格の計算方法
企業のM&A価格の相場は、時価で計算することができます。
双方の企業とM&A仲介会社のコンサルタントが提案する相場価格は、次のような計算により算出され、あくまでも目安となります。
時価純資産 + 営業利益 × 2~5年=M&Aの相場
例:時価純資産 1億円 + 5,000万円 × 5=7億5,000万円
企業価値の評価方法とは?
株式により決定される企業価値(株式価値)は
事業価値 + 非事業用資産の価値-有利子負債 = 株主価値
出典:経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」
つまり、事業価値は事業を継続的に経営し、予想される売上利益、キャッシュ・フローを含む時価の価値を合計したものです。
一方で、株主価値は有利子負債など他人資本を企業価値から引いた株主に属する価値のことです。
株式価値は特定の株主が保有する株式を示します。
非事業用資産とは?
企業が本業の事業により直接利益を生み出さない資産のことを非事業用資産といいます。投資用で保有する有価証券や株式などは非事業用資産に含まれます。
有利子負債
銀行からの借入金を含む、将来返済義務がある外部から調達した負債のことを有利子負債といいます。
有利子負債とは、銀行からの借入金など外部から調達した、返済義務がある負債です。
これらのことから、企業価値=事業価値=株主価値 という定義が成立します。ただし、この定義は企業に非事業用資産や有利子負債がない場合に限ります。
M&A頻出ワード「企業価値」「株式価値」「事業価値」の違い
これら3ワードはM&A業界で頻出するM&A専門用語の意味を理解するには、バランスシートを理解することで解決できます。
企業のバランスシートには企業の保有資産、企業の負債、それぞれの差額となる純資産が左から順に記載され、左と右の各合計額が一致する計算になっています。
資産=負債+純資産
さらに、上記の法則に基づいて企業価値と株式価値をみるには
企業価値=株式価値+有利子負債
企業価値と事業価値の関係は
企業価値=事業価値+非事業用資産
となります。
これらの定義に基づきM&Aの交渉の後に買収価格が決定します。
つまり、買収価格は、その企業の価格です。
M&Aにはどのような費用が必要?
企業がM&Aを行う際、かかる費用は、合併を行う場合にはその交付に伴う費用、株式譲渡の場合、株式の対価を買い手企業が売り手企業に支払う取得対価として必要です。
さらに、M&Aを行う際に必要な付随費用としてM&A仲介会社のコンサルタント、デューデリジェンスのために弁護士など、専門家に支払う報酬があります。
「買取価格非公表」と「株式非公開化」の違いとは?
取得価格は非公表と間違いやすいM&A業界用語に「株式非公開化」という用語があります。
これは、公開されている企業の株式を非公開にした後、上場を廃止することです。ゴーイングプライベート・プライベタイゼーションともいわれ、一般投資家からの出資を受けて資金調達を行なう株式上場企業は、投資家の長期投資が必要です。
しかし、近年では投資家の短期投資志向が強まっているため、投資家が出資をストップする防止策として株式非公開化を実施します。
株式非公開をすることで企業の経営陣は経営を続け、戦略的な改革をすることができます。
このような企業の中には、M&Aを行うことで経営改革を戦略としている経営者も少なくありません。M&Aを行うために株式非公開にすることで株主から反対をされずに行うことが可能です。
まとめ
「企業価値」「株式価値」「事業価値」の3ワードはM&A業界で絶対に知っておくべき3ワードです。M&A仲介会社などの公式サイトやニュースなどの情報を理解するうえでも、基本的な3ワードの関係を抑えて就職に役立ててください。
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